面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

ETの事

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ETは去年、うちの裏玄関の傘入れの下に迷い込んだ3兄弟の一匹で雌である。今年の9月で1年、人の年齢で言えば18歳のJKである。どこでどう聞いたのか分からないが、我が家の裏玄関までたどり着き、他の大人の野良猫どもに交じって、傘入れの下でコソコソッと餌をかすめ取っていた。何故うちが猫ちゃんポストとなる家に変貌したかと言うと、これまで家の向かい、国道を越えて、釣りバカどものまき散らした撒き餌を食べに、これまで何匹の猫が夜、車にはねられたことか。僕はその度に、そんな猫を段ボールの箱に入れタオルとカリカリを入れて水葬にした。そこでやむなし、世間のばぁさんどもの批判はあるものの、我が家に寄ってくる猫を、拒否しないことにした。幸い結構な過疎地で、近所の人口密度より、うちの周辺の猫密度の方がたかいのだ。最近ではイノシシも深夜に歩き回る田舎であり、猫数匹、賑やかでいいではないか。そんなことを想うに、この飢えた三兄弟の事故死も時間の問題かもしれぬと思い、当面、2階のベランダで飼うことにした。はいつくばって、物置の下から引っ張り出し、3匹をベランダに連れ出し、餌を与えた。だいたい警戒して逃げてしまう場合も多々あるのだが、この3兄弟は図々しくも居座ることになった。と、思いきや、数日後には、家の中に「入りたいよ~う」と、網戸を順番に登りだし、順番に垂直ほふく前進。頂上に行くと急降下攻撃、必死で部屋の中を覗き、網戸を引っかくのだ、網戸の向こうには、我が家の猫族の主、「寛太」と寛太の義理の妹、「小玉」が平和そうに我らとともに餌をお腹いっぱい食い、寝転がり、テレビのバラエティを見て手を叩いて(嘘)喜んでいる。三日三晩3兄弟の網戸急降下攻撃を受け、やむなし、その3匹は我が家の家猫に昇格した。みんな同じ柄で、飼い主としては全然おもろくないのだが、性格が全然違うところが面白い。最初の名前は、娘がつけたのだけど、「ワラビー(ワラビ餅)」「キナコ(きなこ餅)」「マーガリン(もちろんパンにつける…)」20歳過ぎてもいつも腹を減らしている、ニセ動物看護士の娘がつけそうな名前ばかりだが、彼女は満足して京都に帰っていった。そんな3兄弟も3ヶ月も経つと、名前変更。ワラビーが「ポンタ」、キナコがET、マーガリンはマリリンとなった。

もう一年も経ち、「ポンタ」「マリリン」はそこそこなついたが、ETだけはほとんどなつかない。他の猫とも距離を置き、気に入らないと二本足で立ち走り、両手でぱんぱんぱん!と連中の顔を叩き、追い払うのだ。寝るのも一人。やせた体を丸めてじっと眠りに落ちる。ようやく背中だけはさわらせてくれるのだが、それ以外、全部拒否。喉を鳴らしたこともない。一人、濡れた丸い瞳で、闇を見つめている。

 僕はそんなETの存在を、「虚無を見つめる宇宙猫・ET」と名付けたのだ。ある日、ETの体”縦半分”の色が変わり、黄色に輝く時があった。このまま金色になるかと思ったが途中で全身金色変色運動は停止した。宇宙から変身の指令の電波が途絶えたのか。

映画評論家の高橋ヨシキさんのラジオでの映画評が面白くて、よく聞くのだけど、「魔法が使えるのなら、どんな希望があるか?」との質問に彼は「もし可能なら、今から30億年後の地球が見たい」と答えた。その時、僕は生まれて初めて、同じ希望を持った人と出会えたことに驚き、喜んだ。今から30億年後、つまり太陽が膨張し、我が地球が太陽に吸収されなくなる時のことだ。その後、太陽系自体も爆発し、最後は手のひらに乗るほどの大きさの小さなサイコロ大のブラックホールになる。彼は「その時を見てみたい」と語ったのだ。人の存在どころか、太陽系の存在すらなくなるなんて。嗚呼、僕も充分宇宙規模の妄想家だが、彼もそうだった。毎月数回は、僕はその問いに絵耐えるべく悩みに悩む時があったのだ。死後の世界が何じゃい、死の世界がなんじゃい…青年よもっと悩め。宇宙の果てはどうなっている…

虚無はそんな宇宙の果てからやってくる。そもそも猫には言葉がない。何か訴える感情や鳴き声はあるが、物事、思いを形にする言葉がない。空腹や外敵に怯える感情はあるが、自分の死についての恐怖はない。死という定義もない。ETの心は空虚で満たされている。ETは何も期待していない。ETの思想にはどんな哲学者も勝てない。ETの瞳には、宇宙の果てからからリンクした虚無の輝きだけある。

そんなETからみたら、僕はどんな風に見えているのだろうか。理解できない、広大な宇宙の端っこを、ただその端を撫でて、考えたふりをする、ブログを書いた振りする、ただの空気のような馬鹿にしか見えないのだろうかね。人間には言葉があるから、希望だの絶望だの勝手に頭の中の世界を作り上げているだけなのだ。

こんなところで、つまりETよ、うるさいおっちゃんの脳は疲れたよ、もう寝るよ。そう簡単に宇宙の謎は解けそうにないさ。また、いつかブログに書くが、ETもたまにヒントくらい、くださいな。

※ETがJKであれば、多分、くるぶしまである長いスカートをはいて、小柄ながらも、板のような鞄を持って学校に行っただろうな。先生のいう事は全く聞かずに、それでもテストの成績は良かっただろう。もちろん友達なんか居ない。近づくオス猫どもを、二本足で立ち上がり、廊下で前進高速パンチをお見舞いしただろうな。パンパンパン。