面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

猫のノミをつぶす。


我が家は猫の多頭飼いで家に6匹、玄関先に2匹、合計8匹の大家族だ。

みんな野良猫で天涯孤独だがボス猫の名は寛太。次はメス猫のコダマ、そしてポンタ、マーガリン、キナコの三兄弟。(兄弟なのに仲が悪い) 家に最後に迷いこんだ最後の猫がチャーリー。こいつは玄関先の洗濯機の中に潜んでいた。しかも洋猫、長毛種で力が強く、外見は建設業の親方が履いているニッカボッカのような、腰から下がぼわんと、ふくらんで、後ろ脚をすりすりしながら廊下を歩く。毛色が茶色で名前を「チャーリー」にした。

我が家の猫族の親分「寛太」は6歳。寛太の名前の由来は単純、「よく噛む」からそう付けた。気が荒く、子猫時代でも僕の首を噛みに来た。それくらい生きるのに必死だったのだ。寛太の左目はカラスに突かれて、今でも少しただれて涙が出ている。

てっきり猫の寿命は6年くらい。僕が大病した時の寿命もあと6年とかネットに書いてあったから、つい信じ込んでしまい、どうせ自分が死ぬ頃に猫どもも死ぬなら仕方ないではないか、みんなであの世に行こうと考えていたのだが、どうして後で知るに猫の寿命は長く、特に最近の家猫はなんと20年近く生きた例もあるそうだ。と、いう事であと6年の自分の天命を待つどころか、この猫どもの為に、あと最低10年は生きて奴らを養わないと行かなくなり、そう簡単に死ぬわけにはいかなくなった。

 

猫のおかげかどうかは分からないがそうして僕も生き延びて6年が経つ。年に1回の脳のMRIも今年で来なくていいと熊本市済生会の脳外の若い医者に言われた。「今度来るときは救急車で来い」ということですかね?と聞くと「はいそうです」と答えた。万が一そうだとしてもこのUという若い脳外の医者には世話になるまいと、怒りで心震わせながら思った。

洋猫「チャーリー」は脱走癖があり、重い玄関の戸まで引き外に脱走する。夜中に老いた母が懐中電灯を持ち、誰も居ない裏山、廃屋の路地を「たぁりー」「たぁりー」名前を呼びながら探すのだ。遠くでチャーリーの鈴の音が聞こえるが帰ってこない。

 

ただ、奥の神社の鳥居の下には漁師のウエスギさんの猫「おキツネ」様が居て、おキツネ様は生粋の野良猫、数年間、我が町の猫エリアを支配していた。尻尾は見事、L字と曲がり、体毛はまさに神社のお稲荷さんのように白く、曲がった尻尾の部分だけが茶色になっている。おキツネ様は我が地域でも名だたる喧嘩王者で、人間さえ、すれ違う時におびえてしまうほど怖いオーラが出て、そのおキツネ様ににらまれたら、チャーリーは一目散に我が家に逃げ帰るのだ。

 

そして玄関を入ると老母の折檻が始まる。「あれだけ出るなといったろうが!」チャーリーはすかさず、タンスの上に登り、老婆から逃げて、タンスの上で足の先で自分の喉あたりをかく。つまり今はノミの季節なのだ。

 

「チャリー」「寛太」「ポンタ」「コダマ」「キナコ」「マーガリン」が一斉にのどの下を足で掻く。掻きようは各人各様。全員、チャーリーが連れて来たノミの季節なのだ。100円均一のガムテープを指先で丸く丸めて行き、ノミ取り用の櫛を二つ交互に使いながら飛び出してきたノミどもをテープに押し付け櫛の先でつぶす。

 

面倒で順番にのみを取っていくのも時間がかかるものなのだ。朝晩、時間がある時に捕まえてノミを取る。ただ、次第に慣れてくると結構なストレス解消になるのだ。無心になる。

 

ガムテープの罠の中であえぐノミたちをプチりとやる。またプチり。逃げてもプチり。

 

巷で話題の某、中古車販売メーカー。

今年カミさんの車を買った。プチ。

これまで、黙殺してきたのは、誰だ?マスコミもグルだろ。プチ。

けしからんと、わめく、便乗タレント、元政治屋。プチ。デビなんとかという、おばさん、プチ。

 

ついこの前、自死したタレントの事は

もう、みんな忘れてしまった。プチ。

 

台湾有事台湾有事といいわめく、政治屋、タレント、プチ。お前らが一番先に逃げるくせに。プチ、プチ、プチ。

 

テレビの向こうでは戦争が続き、チャンネルを変えると大谷がホームランを打ち、今日もニュースになった。プチ。

 

つぶしても、つぶしても湧いてくる、ちいさな黒いプチプチ。

かき分けてもかきわけても、湧いてくる黒いプチプチ。

 

今度の土曜日、みんな、バルサン焚いたるぞ、プチ。ストレス解消、プチプチ。

 

山下達郎、プチ。

この前、坂本龍一氏が参加している中古のCD買ったのに。

 

作詞家の松本隆、プチ。

NHKラジオで「先生」呼ばわり

チャホヤされて、いい気になっていた。

 

気が付くと僕の背中に大きな黒い影が迫り、

丸い指紋の大きな指で、僕をつぶしに来る。

 

僕の悪口を言いながら、同じ時間に猫のノミを

つぶしている誰かもいるのだろう。

 

僕は汗臭い布団の上で胸に手を合わせ、目を瞑る。

 

プチリ。