面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

船に酔う夢。

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船に酔う夢を見続けている。

 

奇妙な体験でもある。僕の体が横たわって、

波の上でぷかりぷかりと漂い、船酔いする船は

石の棺、つまり棺桶なのだ。

 

これまで迷っていた、小田良の古墳を見に行った。

その古墳は国道沿いに、菜の花がまばらに咲き、

半ば放置されたような畑の奥にある。

僕は無理やり、その古墳を見に畑に足を入れた。

およそ、5メートル四方、石で囲まれた古墳の後は、

大きな鉄の屋根に覆われていた。

 

古墳の向こうには濃い緑の海がのぞき、

その向こうには雲仙の尾根が

くっきり浮かび上がっている。

古墳の前には説明のパネルが表示されてある。

 

県内でも珍しい6世紀後半に建造された装飾古墳で、

中は3列に区切られ、左右に死体が横たわり、

真ん中の列には勾玉や銅剣、

内側の石の壁には赤や青の塗料で、

同じく勾玉や銅剣の文様が描かれてある。

死者の魂を飾り、守る願いが込められてあるのだ。

 

その2列に並んだ死体は雲仙の方角に向いて眠っていた。

地元ではその墓の事を「チンカンサン」と呼んでいたそうだ。

 

チンカンサンは1792年の雲仙大噴火時に押し寄せる

津波で流されかけたが、なんとか、当時のまま残された。

その津波では多くの人が海に流され、被害を受けた。

 

それからちょうど200年後の現代。

1990年にも雲仙は噴火し、

火砕流で大きな被害を受けたが、津波はなく、

熊本側では雲仙の山を走る、灰色の雲や、

夜の噴火の赤い筋が見えた。

 

地震などの自然災害も繰り返し、

人々の生活を脅かし、

今回の自然の疫病

コロナウィルスも

多くの人に不幸をもたらした。

 

勾玉や銅剣を発掘したのは

小田良に住む同級生の

若本君や三郎だった。

 

教育委員会

彼らは高校時代に発掘を

手伝わされたのだ。

 

ざらし、草の茂みの向こう。

今やその存在さえ、

誰も気が付かないチンカンサン。

 

春のあの日から僕は長い間、

船に酔う夢を見続けているのだ。

 

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