面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

とうさん

知人の会社が倒産した。新聞やネットでも書かれた。負債総額約2億円。同じ業界ではみんな知っている。とうさんなのか、破産なのか。どっちにしても財産を整理され、債権者に一部返済されるが、僕の経験では貸した金の100分の1を数年かけて返済されるか、途中でその会社は返済さえできずに世間から消える。100万貸して1万返ってきたらいい方だ。

知人(10歳くらい年上)といっても腐れ縁で、こっちは会いたくないのに、いきなり事務所に訪ねてくる。あずき色の高級車をうちの事務所の駐車場に何度もバックで停めようとし、車止めに跳ね上がりながら、ようやく止まるのだ。超ワンマンで髭面、強面だが、何故か僕とウマが合う社長さんだった。いきなり玄関先に上がり込み、何を言ってるのか聞き取れないくらい、どなりちらし、散々言いたいことをいい「帰るわ、今日はこれだけ」と言って、またその見かけないあずき色の車をパートさんの自転車を倒さないようにして、アクセルを踏んで出ていくのだ。その怒鳴り散らす、話の中で「俺と一緒に事業をしないか」と誘うのだった。僕は考えるふりをしていつも断っていたけど。

負債額2億とは大した金額だが、零細企業で1年で2億くらいが一番うれしく油が乗り、もっと攻めたくなる金額だと思う。実はそれが限界で、だんだん頭打ちになり、どんどん業績が上がらなくなる。そこが引き際だが、いつの間にか引くにひけなくなり、少し赤字が出始める。2億売上でそんな赤字すぐ返せると思うし、ところがなかなか返せなくなり、更に負債が膨らむ。僕の予想が当たっているかどうかは不明だが、みんな僕の悲しい経験からくる結果論。

僕が氏と一緒に事業をやり、これが引き際だと言っても彼は絶対折れないだろうし、どっちにしても仲間割れしたろう。彼の会社はコロナの感染関わらず、どっちみち春に倒産する運命だったのだ。

もっと可哀そうなのは氏の会社の社員でもあり、コロナ不景気の中、路頭に迷うその家族。僕も先代の社長から散々、ひどい目にあったが、当時のメンバーは更にひどい目に合ったことを知っている。

おかげで人を見る目を養うことが出来た気がする。例えば新聞の正月のインタビューで夢を恥ずかしげもなく語る人物にはご用心。(ほとんどライターが描き直している…) そんな人物がずらりと地元紙の紙面に並ぶのだが、まず読まない方が精神衛生上に良い。そんな硬直した屁理屈で、今の世の中渡れるはずがない。今回のコロナでは、いくつもクモの糸が垂れ、たくさんの人々がそのクモの糸に下がり大騒ぎ。社長が一番先に糸にぶら下がってどうする。プライドなんぞ、捨ててみんなと会話した方が良かったのにね。まだ引き返せるうちに。