面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

半沢ロス。

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半沢直樹が終わった。僕も少し半沢ロスなのだ。日曜の夜のテレビは、我が家の定番、「なにこれ珍百景」から「ポツンと一軒家」そして「半沢直樹」というゴールデンルートを辿るのだった。普段はほとんどテレビを見ないのだけど、日曜の夜はこのルートを辿る。わがままを言えば「半沢直樹」の後に「ポツンと一軒家」の放送が自然だと思うのが。つまり、腐れ切った社会、上司に、会社に半沢直樹のように「倍返しと叫び、辞めてやる!」と辞表を叩きつけ会社を辞め、わずかな資金で田舎の土地を買い「ポツンと一軒家」のような家を建てるのだ。小さな畑で自給自足、余生の時間を自分の為に使う。そんな夢を見る輩は少なくないはずだ。

ところが老々介護、会社を定年で無事に辞めた友人たちでも、悠々自適のはずが老々介護、よく愚痴を聞かされる。我が家も同じ、老々介護、と自分の病気で自由が利かぬ。山奥に引っ越しして、また頭の病気が再発したら、それこそ死ぬのだろう。通院するのも大変なのが想像できる。せめて近くの里山にでもと思い、JRの窓を眺めているうちに、赤瀬駅から網田駅までの海沿いの畑の中に、素敵な場所を見つけた。春先は大きな一本の桜が咲き、その高台から見る海の景色が良いのだ。眺める有明海雲仙岳が浮かび、夕日に桜の木がオレンジ色に染まる。

今春、たまらずその場所を探して車を走らせ、ようやくその桜の場所を突き止めた。写真を撮るふりをしながらぶらぶらしていると、早速近所のおばさんが出て来て桜自慢を始めた。そのおばさんの家は桜の咲く平地と庭がつながっていて、もともとその場所は小学校の跡地だったのだ。その平地は校庭。そのおばさんの家も平屋ながら、まるで喫茶店のようで素晴らしい、庭の花壇には花が咲き乱れ、芝生の上には猫がのびのびごろ寝している。誰も干渉しない、小さな丘の上の小さな秘密の場所なのだ。あきらめきれずに、毎朝僕は列車の窓からその景色を眺めるに、その家の周辺には、ぽつぽつ空き家があることに気が付いた。

そんな空き家も、まだそんなに傷んではなくきちんと庭があり、ベランダがあり、もったいない家もあるが何故かヒトケがないのだ。いよいよたまらず、この前、その空き家を見に行った。桜の木からすぐだが、屋上には手すりもあり、そこから海をながめたのだろうなと想像したりした。庭には雑草が生えていたが、小さなベンチがあり、そこでのんびりしたのだろうなとも想像した。玄関には少し古ぼけた表札があり、完全な廃屋ではなかった。桜守のおばさんに聞いたらその家の事情はわかるのだろうが、そこまでしたら怪しまれるので帰路に就いた。

それから1か月たった頃、いつものように車窓からお気に入りの家を眺めるに、なんとその家のベンチの上には、桜守の家の庭にいた、黒いかすんだ柄の猫が「ぽつんと一匹」その草むした古いベンチの上に座って、くつろいでいた。

どこにも行けなくても、せめて好きな場所でぼんやり座っていたいものだな。