面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

ありがとうよ、寛太

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寛太は我が家の猫族の長である。5歳の雄で、天涯孤独、これまたいつものように裏玄関の傘立ての下にいた。当時は完全な野良猫で、傘立てに居ない時は、裏の空き地の草むらで身を隠しながら生きながらえていた。

おそらく父親は伝説のボス猫「チビ」だと思うが、ある日、夜な夜なよそ猫の襲撃をくらい、さすがのチビもある日突然我が家から消えた。全盛期のチビはうちの2階のベランダにハーレムを作り、総勢10匹近い集団をなして我が家の家計を脅かした。餌や砂の処理も大変だったが、ベランダの手すりに天気のいい日はずらりと、大小10数匹の猫が並んで日向ぼっこをする光景は壮観だった。そんな光景の横でせっせと僕はデッキブラシでベランダの掃除をするのである。(ブラシの柄で順番に猫をベランダから突き飛ばすことに快感も覚えたけど)餌も20キロ単位のお徳用。砂も2階に運ぶのも大仕事だった。当時は猫の飼育知識もなく、即、去勢をしたらそんな増殖せずに、苦労はしなくて済んだのだが、どうにもこうにも次から次へと我が家に猫がやってくるのである。どこにあの悪相のチビに魅力があるのか不明だが、そんなチビ王国も下剋上、とうとうヤクザ猫に追い詰められて、1階に降り、最後は悲惨にも一家離散となった。寛太一匹、チビ族の栄光と悲惨を背負う、天涯孤独の子猫だったのだ。

寛太は子猫ながら生きるのに必死で、カラスに目をやられ ( 母の目撃談 )今も片目だけ涙が出て止まらない。最初は餌を投げてもなつかず、近所の漁師の植杉さんの奥さんが魚の残りを持ってきて与えていた。おかげでうちの裏庭は生魚の死骸の山、悪臭まみれ、ゴミ捨て場になり、さらにその餌に猫が寄ってきて困った事態になったのだが。結局のところ、仕方なしに家で飼うしかないと、今度は寛太の姿を探す時に限って寛太の姿がない、数日後、捜索範囲を広げたある日、その植杉さんの家から我が家に小走りにかけてくる寛太を捕まえ家に入れた。その夜から寛太は高熱を出し、部屋の中の小箱の中で数日間身を潜めた。ようやく熱も収まり、少しづつ、家に慣れたら今度は野生児の本領発揮、部屋で暴れまくり、手がつけられない。僕の手足を噛んで離さないのだ。(名の由来は噛んで噛んで、だから寛太。)カーテンのひだの陰から僕の首筋に向かいとびかかる子猫。(そんな猫が居るとは!)

そんな日々の中、熊本地震が起き、我が家も家族一緒に学校の駐車場で車の中で寛太も一夜を過ごし、そのころからだんだん性格も大人しくなってきた。

そして去勢。とたんに性格も穏やかに劇的に変化、時々、クイックイッと何かをつぶやきながら僕の膝の上にやってくる。頭もよく、半分は人の意志を理解し、行動する。寛太は僕が病に倒れてから、いつも様子を見に来る。朝方「親父生きてるか?」見たいな観察に来るのだ。僕の頬をざらざらした舌で舐めて起こす寛太。明けきらぬ朝に僕は寛太を膝に乗せ、瞑想する。猫は弱い生き物だ。何もできない。ただ存在するだけだ。人も本来は弱い生き物なのだろうが、自分を強いと勘違いした馬鹿が、弱い人をイジメて偉そうにするのだ。弱いものは弱いと知ることで、お互い平和に暮らすことが出来るのに。寛太は賢いのでそういう事も良くわかっている。クイックイッと何かをつぶやきながら歩く時、いったい何を考えているのだろうかな。天涯孤独の身なのだが、寛太はぜんぜん寂しくないのだ。