面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

京都 一乗寺 萩書房に行った。

久しぶりに京都に行き、一乗寺の「萩書房」に行った。店主の井上さんとは、もう30年近い仲なのだけど、お互い人見知りで、ほとんど話はしたことはない。それでも30年近い関係と言いうのは不思議なものだ。京阪から、出町柳、そして叡電一乗寺に降り立つ。一乗寺は相変わらず、若者の街の風情だ。大昔は駅の近くに「京一会館」という伝説の名画座があった。(有名な窓口のおばちゃんも居た…)そんな時代から古書店「萩書房」はあったのだ。しかも驚く事に店の看板もその当時のまま。長い年月を飛び越えて来た。誰が書いたのかは知らない。当時は全国から得体のしれない、人物が集まってきていた。

 

萩さんのすぐ近くに、これまた有名な「恵文社」や、少し離れてガケ書房に、ほほほ座…えーい、もっと離れて「3月書房(新刊書店…今はネットのみ)…もっと離れて、超伝説の「アスタルテ書店」まで…でもそんな超有名店に負けず劣らず萩書房はある。久しぶりに行くと、店の奥から「来はったんですか…」という、それだけのお迎えの言葉がある。「ええ、ちょいと今度、用事がありまして…そのついでに長野に行くつもりなんですがね」「長野…?でっか?」「はぁ」いつも通り、会話も弾まない…何かしら元気がない…。

店に並ぶ古書も元気がないというか…そりゃ、古書だから元気はないだろうが。しかし、棚をなめるように見てあるくと、さすが、井上さん。品揃えがすごい、びっちりスキがない。おおーザ・バンドの伝記本…いくら?あー1冊8千円、なんで数百円の本の横に貴重な本が置いてあるねん、おおー、ビートルズ東京公演のカタログ、なんと数万…そりゃ、そうだろうよ。見れば見る程、欲しいが手が出ない。結果、竹中労氏の本数冊、稲垣足穂の文庫数冊。しばらくすると若者で店内は込み合う。

「で、いったいなんですかぁ、長野」「ちょいと、縄文にイカレ、諏訪大社イカレてしもて…」棚の目の前にさりげなく「尾形亀之助全詩集」がある…前回は谷崎潤一郎自費出版の日記本があった。(1冊 2,000円安かった)…近くの法然院に谷崎の墓地がある)

そうして久しぶりに会えたのに会話は数分…「では、また…」

 

しばらくして「縄文の本ありましたわ」とメッセージが来て2冊の画像が送られて来た。見たことなかった写真集だった。即買いして見ると、2冊ともなかなかいい。

穴の奥に棲んでいる秘仏のような、口下手の店主でもこの道、数10年…兄さんも別の場所で古書店を営み、親子代々、筋金入りの古本屋なのだ。

※元気がなかったのは、お父さんが2週間前に、亡くなったばかりだった