面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

おれおれじいさん。

携帯を3回も忘れる自分だ。忘れないようにするためにはまず、自分の身の回りをすっきりさせること。そう思い付き、会社の銀行口座もすっきりさせることにした。まず当座預金口座の解約。今どき、小切手、手形を切ることはまずない。昔は当座預金の開設が会社の信用にもなっていたのだが、今は違う。普通ならいつでも出し入れが可能でべんりなのだ。特に熊本では熊本銀行の小切手は使わない。で、解約の手続きに街中の銀行に出向いて手続きをした。待たされてる長い間。前の席に座った帽子を被った80は過ぎたおじいさん、どこでもみかけるようなおじいさんと銀行娘のやり取りが聞こえる。

「ハワイに行き、外国の銀行に口座を作る。そのために4日ほど現地に行き手続きせんといかん。カードも作らないかん」

「(何か騙されてるのかも?じいさん…)もう少し、お話を聞かせてください。

「日本はな、少子高齢化で財政難で、もうすぐ大変な時代が来るんじゃ、未来はなか。そんな時のために財産を海外の銀行に全部移すんじょゃ」

「そのな時が来る前に、じいさん、死ぬよ」…と口をはさみかけたが、何か俺も何か疑われそうで、辞めた。

銀行娘の目が光る「もう少し、お話、しませんか…」

「マジで、じいさん一人でハワイに4日間の旅…行くのか?」

もう少し話が聞きたかったが、奥で呼ばれ、僕は言われるまま、会社の実印を押し、紙切れになった小切手の束とペラペラ、何も数字も並ばない通帳を鞄に詰め込み、その場を去った。

オレオレ詐欺は親族を装い「おじいちゃん助けて、金貸して!」と泣きつく手法だけど、今回は、日本国家が大変だから、金貸してという国家を振り切り、じいちゃんハワイ(の銀行口座に)に脱出という構図だ。

日本国の債務は1,000兆円、それでも国債買ってるのは日本人だから大丈夫なんて能天気な評論家の本、言説は腐るほどある。そんな甘い予想に騙されるもんか、てなおじいちゃんなのだ。さて、どっちが騙すか騙されるか、言い換えれば去るも地獄、残るも地獄。

もうすぐ、無一文の僕。今回の当座解消でまた一つ、僕の身の回りはすっきりしたのである。ぼくはこれまでもこれからも、ハワイに行こうと思った事は1回もないのだな。

おれおれじいさん、命短し、恋せよじいさん。