面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

秋の山猫

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山猫の名の通り、僕も山に登っていた。熊本でも深い山に登ると紅葉がきれいだ。この写真はある峠から西に向かっての山の稜線の紅葉だ。長ーい林道をえんえんと車で走り、トンネルを抜けると峠に出て、その峠から急坂を登った場所が東西に長く伸びた稜線なのだ。

稜線にそった頂上には変な名前のピークがある。山犬切(やまいんきり…オオカミを刀で切った)七遍巡り、(ひちへんめぐり…七回も道に迷う)など、峠そのものが石楠越(しゃくなんこし…百難こし…石楠花なんて咲いてない!)

そんな山の中で一昨年僕は一人、道に迷い、谷に落ち遭難した(苦笑)山で猫なんて一匹も見たことはないが、僕そのものが、カメラを背負った山猫なのだ。

山犬切の登山道で、赤や黄の落ち葉に埋もれないように、靴で蹴とばし歩いたある日、帰りの林道で一人、車を停め、イーゼルを立て絵を描いている男の人が居た。彼は車いすに乗り、紅葉の盛りの稜線を描いていた。写真は絵には勝てない。いくらカメラの性能が良くなっても、人の感性にはとても追いつかないのだ。筆を持った彼は、画布にどんな色を塗ってもいい。赤でも黒でも白でも。自分の思うまま、ナイフで切り裂いてもいいのだと思う。もちろん、実際の彼はそんな絵でなく、じっくり自然の季節の表現を忠実に描いていたのかもしれないが。そんな出会いの時、なかなか声もかけられないものだ。僕は横の空き地に車を停め、つまらないシャッターを切った。

こんな病気になってしまい、もう登山は無理か。相当覚悟してでないとあの稜線も登れないのだろう、が、もう一度、燃える秋の景色の中で、シャッターを切ってみたいものだ。あのひと時を、感じてみたいのだ。あの絵描きの男にはもう会えないだろうけど。

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