面白半分 猫半分

人としての面白半分な日々と、猫とともに面白半分な日々。熊本在住。頭も半分、おバカさん。

押し入れの冒険

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我が家には猫が6匹いて、みんな生い立ちも性格も全然違う。去年の9月、やむなく家に入れたキジ猫三兄弟も、すくすく育っている。みんな同時に生まれ柄も全く同じで最初は見分けがつかなかったが、今は3匹とも、見分けがつく。

僕は名前をいい違えるけど、すぐに言い直す。長男が「ワラビー」で相当なイケメン猫だ。鼻筋も通り、目も丸くぱっちり、ジャニーズ系の顔立ちだが、残念ながら先週去勢手術となった。我が家で3番目のカマ猫である。長女は「マーガリン」その名の通り尻尾がギザギザに曲がっている。顔つきも美人、魅力的でちょうど、今風、おしゃれな女子高校生風。弓道部(何故?)で横顔がかわいらしい乙女猫だ。次女が「キナコ」この子は、超個性的で、キジ猫の柄がある日突然、体半分、黄色い毛に変わった。つまり、ワラビー(ワラビ餅)マガリン(マーガリン)、キナコ(きな粉)、3匹揃って食べ物に由来る名前なのだが、これは京都の北野白梅町のバス停で見知らぬ婆さんに「この娘の本性は化け猫だよっ!と叫ばれた、我が家の筋金入りの猫娘命名なのだ。

奴らが調子に乗り過ぎて、カーテンレールの上をたどり、カーテンを落としたり、台所の花の鉢を落とし、流しを土まみれにしたり、アマゾンで買ったばかりのテレビを爪で引っかいたり、部屋の戸を外したりすると僕の怒号が飛ぶ。

「ワラビ!マーガリン!キナコ!」家の事を知らぬ人がこの怒鳴る声を聞いたら、僕は相当腹が減って怒りまくっている餓えた親父なのだ。

まぁ猫ども、生まれて半年、人で言えば20歳前後の若い盛り、悩める青春時代なのだ。

ワラビとマーガリンはもともと賢く、家猫の王道を歩み、空気を読めて、だいたい今、怒られてるか、褒められてるか、雰囲気で僕の気持ちを推し量ることが出来る。

「キナコ」が少し、難しい性格で人にこびず、我が道を歩んでいる。食欲はとても旺盛でよく食べるが、全然太らず、やせたままだ。何らかの病気、野良猫特有の遺伝的なものかもしれず心配なのだが。ふだんから「キナコ」は一人、押し入れの布団の上で寝ていて、他の猫と一緒になることは少ない。どこに行ったか、押し入れの暗がりを覗くと、やせた三角の顔と、ぎょろりとした大きな瞳をのぞかせる。

仕事が休みの時に、ベットで体を横たえていると、部屋の奥の押し入れでキナコも、体をたたみ眠りについている。ワラビもマーガリンも、隣の部屋で日当たりのいい窓際で、外の景色を眺めながら、春の陽気に体を開き、思い切り両手を開き、昼寝をしている姿と、対照的なのだ。

押し入れの暗がりの奥で光る猫の目の光。薄暗いトンネルの奥にかすかに見える出口のようでもある。キナコはどこから来たのか。何を考えているのか。もちろん猫には言葉がない、自己の感情を定義するものがない。キナコの存在を定義すると、小さな孤独の光とでもいおうか。キナコから僕の存在を定義するとどんなものか。ベットに横たわる、どんよりとした存在なのか。

さてさて、これから僕ら二人はどうなるものか。ワラビーや、マーガリンみたいに猫らしい優等生にはなれないキナコ。押し入れ猫の存在にささやかでも励まされる僕なのだ。